高齢化、温暖化、人口増加と食糧危機、COVID-19によって否応なしに変化するライフスタイル。我々は今、かつてない大きな社会環境の変化に直面しています。
高齢化社会・人口減少 総人口での65歳以上の老年人口が増大した高齢化社会は、すでに日本では現実の問題です。日本の高齢化率は現在でもすでに世界一となっており、2050年には35%を超えると予測されています。先進国の中でも真っ先に高齢化社会に直面する日本。その環境下で如何にサスティナブルな社会を作っていくか?日本で我々は大きな課題に直面しています。AIの活用、DXによる生産革命と業務プロセスやサプライチェーン変革など、今後の日本は良い意味での高齢化対策への実験市場としての役割を担うことでしょう。また、消費と税収を担う総人口と及び国力を維持するための労働人口の確保も大きな社会的課題です。政府は公式に認めていないものの、日本における外国人労働者数は既に40万人近くとなり、世界でも五本の指に入る労働移民国家となりつつあります。現在でも多様化しつつある日本の社会で、文化や人種の多様性(ダイバーシティー)は男女の均等な労働参画といったジェンダーに次ぐ次の大きな課題です。
地球温暖化 日本を含む国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の締約国は、2016年のパリ協定で地球温暖化を2℃(3.6°F)以下に抑えることに合意し、温室効果ガスの大幅削減に取り組んでいます。しかし地球の平均地表温度はすでにこの約半分まで上昇している危機的な状況です。また現在の温暖化が進行した場合、夏季オリンピックで過去に開催・立候補した計193都市において暑さ指数が要警戒以上となり、60%以上の都市で2050年8月の開催が実質困難となるとのレポートも出ています。世界的な大きな課題です。世界の主要国が温室効果ガスゼロエミッションを宣言する中、再エネなどへのエネルギー転換、動力の電動化、水素やアンモニアといった代替エネルギーへの社会インフラの大幅シフトなど、我々の将来の挑戦は非常に広い範囲で存在します。加えて、今後100兆円規模で実施される、EU、米国、中国などの各国のグリーンリカバリー政策は、今後の技術競争を大きく左右するでしょう。
世界経済の行方 COVID-19によって混乱する社会と二桁で低下するGDP。加えてロシアのウクライナ侵攻と台湾を取り巻く西側諸国と中国の緊張状態。我々にはまだ出口が見えていません。COVID-19の影響は業界でも様々で、各シンクタンクレポートを総合的に見た場合、デジタル化で需要が安定している半導体やIT業界、市場が拡大している食品・医療業界などがある一方、輸送機機・機械機具といった未だ出口が見えにくい業界もあります。同様に各レポートを総合すると、GDPがCOVID-19前の2019年レベルまで戻るには5~10年近くかかるというシナリオも考えられます。その予測に加えて昨今のエネルギー資源の価格高騰、ロシアのウクライナ侵攻に端を発するイデオロギーの衝突とそれがもたらす世界の政治・経済の不透明性を考えるならば、仮にこれらの様々な課題が解決し、世界経済が徐々に回復したとしても、進行する地球温暖化と異常気象の社会への影響は避けがたく、石油、天然ガス、レアメタルなどの資源確保に代表されるように、再生可能エネルギーや水素・アンモニア、合成燃料などの代替エネルギーに基づく社会構造維持のために必要な資源をいかに確保するかという命題が我々を待っています。